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本のレビュー「トコトンやさしいCRMの本」

とことんやさしい CRM の本

どうやったら、モノが売れるか?考えたときに、読んだ本です。CRMのITそのものも重要ですが、それ以上にマーケティング基本的な考え方が勉強になりました。背景や基礎を知るという意味で、一読いただけると大変参考になると思い、ご紹介いたします。

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目次

概要

ジャンル :IT
著書   :トコトンやさしいCRMの本
著者   :藤田 憲一監修、ニューズウォッチ情報分析事業部著
発行日  :2004年4月30日 初版第1刷発行
発行所  :日刊工業新聞社
おすすめ度:★★★☆☆

監修者略歴

藤田 憲一(ふじた けんいち)

株式会社ニューズウォッチ 情報分析事業部長。1970年愛媛県出身、中央大学法学部卒。 大手ダイレクトマーケティング会社、大手広告代理店を経て、 大手シンクタンクの複数の新規事業プロジェクト(「価格.COM」など有カコミュニティの書込をマーケティングに活用する事業、テキストマイニング事業など)に参加後、現職。その他、同社とマーケティング事業で提携関係にある株式会社ジェイマーチ取締役兼CEO(最高経営責任者)を兼任。

著者略歴

株式会社ニューズウォッチ

(http://www.newswatch.co.jp/)
資本金:4億2800万円。
株主:東芝、電通、三井物産、凸版印刷他)
ニュースクリッピング事業大手。その他、CRMコンサルティング、テキストマイニング事業、検索エンジン、ポータルサイト「FRESHEYE」の運営。インターネット上のリスクマネッジメント事業、サイトナビゲーション最適化、検索エンジン最適化などのマーケティング事業などを行う。CRMのツールベンダー株BAYTECHを連結子会社に持つ。

本書の要点

  1. CRMはITそのものではなく、コミュニケーションである。
    CRMは、システムが主役ではなく、それをいかに活かすかが重要である。ITの背景にある基本的な考え方の理解し、戦略にどのように活かすかが求められる。
  2. CRMとは?
    CRM(Customer Relationship Management)は、「顧客を正確に知り、顧客の価値観を満足させ続けることで、顧客に必要とされる関係を構築、維持し続けようとする経営手法の事。」である。システム構築は、CRMのための手段でしかなく、入口でしかない。CRMを戦略・戦術の観点からまとめると、以下のようなものとなる。

    1. 目的:顧客価値の最大化
    2. 戦略:顧客ロイヤリティの形成・維持
    3. 戦術:顧客とのリレーションの形成・維持のための適切なコミュニケーション(戦術の要素)IT、組織改革による効果向上、効率化。
  3. CRMの背景にある考え方
    ポイントは「ワン・トゥー・ワン・マーケティング」「リレーションシップ・マーケティング」「パーミッション・マーケティング」という考え方。マスマーケティングの対極のものとなる。顧客のニーズを把握し、顧客との良好な関係づくりを通じて、CSを獲得するという考え方。さらに顧客とのコミュニケーションにあたっては、顧客の許可を得なさいという事も重要となってくる。

要約

顧客価値の最大化

CRMの目的は「顧客価値の最大化」です。 顧客価値とは、一人の顧客からあがる売上や利益のことを指します。つまり、多くの顧客に買ってもらうという観点に立って、「市場の中でのシェアを重視する」考え方ではなく、一人の顧客から「何度も」「たくさん」買ってもらう、つまり、「その顧客の中でのシェアを重視する」という観点に立った考え方です。

個別対応のプロモーション

消費者にモノが行き渡り、「物が売れない時代」となった現在、「新製品だから」とか「CMでよく見る」からという理由でアクションを起こさなくなっています。購買行動のリテラシーがあがり、自分にとって価値のあるもののみを購入するようになった消費者に買ってもらうには、ターゲット・マーケティングが必須です。

1対5効率

個対応のマーケティングの考え方は、いずれも、新規顧客の獲得以上に、既存顧客の維持が重要であるという考えに立脚しております。経営の焦点も「製品中心」から、「顧客中心」に転換し、顧客について深く知ろうとすることに力を割くようになりました。顧客を知ろうとする活動の中で企業は以下の2つのことに気付きました。

  1. 新規顧客を獲得するコストを計算したら、既存顧客維持の何倍ものコストがかかっていた。
  2. 自社の売上のほとんどは、実はほんの一握りの顧客によりもたらされてる。 (パレート法則)

マーケティング活動はアクイジション(顧客獲得)とリテンション(顧客維持)の2つのフェーズに分かれます。 CRMの根幹をなす理論の一つに「リテンションとアクイジションの1対5効率」というものがあります 数々のケーススタディーから、一般的にアクイジションコストは、リテンションコストの5倍かかることが証明されている事実から導かれた理論です。そしてこの理論は、顧客を維持することがいかに重要かというこ とを示しています。一方で、新規顧客獲得がゼロでよいか?というとそうではありません。経営の重点を既存顧客維持に置くための根拠と捉えるべきです。

顧客を差別すること

優良顧客の期待に応えるために、顧客を識別し、優良顧客を優遇する事が非常に大事になる。特にLTV(顧客生涯価値)の高い顧客を重視することが大事である。

ブランド価値

顧客とのリレーションを形成・維持するために、どのようなアプローチでコミュニケーションをするべきなのか?この「いかに顧客と良好なコミュニケーションを行うか?」のキーになるのがブランドです。ブランドは「ブランドイメージ」と「ブランド経験」の 2つの要素で成り立ちます。ブランドイメージとはいわば「企業と顧客との約束」 です。そして、このブランドイメージという「約束」を実行するのが「ブランド経験」です。顧客とのリレーションは、「ブランドイメージ」という約束を「ブランド経験」を通して「実行」し、それにより、さらにブランドイメージを高め、また、その高まったブランドイメージ(=顧客の期待)に応えるという 繰り返しにより築かれるものです。

経験価値

顧客とリレーションシップを形成して、優良顧客化させるには、購入客を満足させる経験が重要になるのです。収益をあげるには、一度買った購入客に「リビートをさせて」、多くの優良顧客を捉える必要があります。モノ余り以前の時代は、製品が提供する「ベネフィット(例えば、掃除機で掃除が楽になる等)」や、製品を所有」すること自体により、顧客は満足を得ていました。それに対し、現在は、製品の「経験価値」と呼ばれる、「トータルな利用経験」が重要になっています。

ブランド経験を生むコミュニケーション

ブランド経験をもたらすコミュニケーションのミッションは何でしょう?その答えは、「消費者との約束」である「ブランドイメージ」の実行です。ブランド経験において重要なキーは2つあります。

  1. 「ブランド経験をもたらすコミュニケーションが企業全体で統一されていること」。
  2. 「ブランド経験(=ブランドイメージという約束の実行) は、顧客毎に異なるものであること」です。

コミュニケーションが企業全体で統一されるべきなのに、顧客毎に異なるべきである、というのは矛盾するようにも見えますが、CRMでは、CTI等、ITの技術で別々のコンタクトポイントのコミュニケーションを一元管理することができるようになりました。ブランド経験をもたらすコミュニケーションとはこのように企業全体のコミュニケーション行動を管理する事です。CRMシステムやそれと連動したCTIなどのコールセンター機能により、それが可能になったのです。

CRMの基本戦略策定法

CRMのスタートは企業戦略にあわせて、ブランドイメージをどう構築し、ブランド経験をどうデザインするかを徹底的に考えることから始まります。その企業顧客の価値とは何か? 顧客接点はどこにあるのか?アクイジションの課題は?リテンションの課題は?といった「顧客とのコミュニケーションについて徹底的に考える」ことから始まります。CRMの設計手順は以下のようになります。

  1. CRMの基本戦略策定
  2. ターゲッティング
  3. 顧客ポートフォリオ管理
  4. リレーションシップ評価、管理
  5. アクイジション、リテンション各フェーズでのコミュニケーション計画。

CRMの基本戦略とは、貴社が、どんな目的のために、どのような顧客をターゲットに設定し、どのようなニーズを、いつどんなタイミングで、いくらのコストを投下して満たそうとしているか?徹底的に考えること。
CRMにおける、ターゲッティングは、利益を最大化できる顧客タイプを、データベースに残る顧客との取引履歴、コンタクト履歴をデモグラフィック、サイコグラフィック等を基準にデータマイニングし導き出す事にある。
顧客ポートフォリオ管理とは、顧客をクラスタ分けする事。既存顧客の中に、優良顧客、一般顧客、流動層、離脱客、潜在顧客の中に、見込み客、一般消費者といった分類を作りコミュニケーションの度合を管理することにある。
リレーションシップの評価とは、各クラスの顧客毎の課題を明確化することである。例えば、個々の顧客から最大の利益を得ているか?顧客が真に望んでいることを把握しているか?適切なタイミングで適切な情報が届いているか?といったこと事である。その際、「顧客情報」を「顧客接点」に最大限に機能させることが重要となってくる。そしてクロスセリング、アップセリングの施策を経て、優良顧客へとステージアップを目指していく。
コミュニケーション計画は、自社の顧客を知る事から始まります。顧客データにより、顧客を識別し、それに応じた対応をすることです。顧客に最適なタイミングで必要なものをレコメンデーションする、「痒いところに手が届くサービス」を提供することです。

具体的な施策

本書では、上記の基本的な考えのもと、具体的施策を紹介しております。インターネットとCRM、メールマーケティング、CRMの一環としてのサイト構築、携帯メール、コールセンターの役割などです。

本書は、CRMの基本的な考え方を理解するのに、とても良い本だと思います。CRMの導入を検討されている方はもちろんのこと、それ以外の方にとっても、マーケティングの勉強になる本だと思いますので、是非一度手に取ってみてください。

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